二十四節気を料理で愉しむ
二十四節気は、太陰暦を使用していた時代に、季節を現すための工夫として考え出されたもので、1年を24等分にし、その区切りに名前をつけたものです。現在でも季節の節目節目に、これを示す言葉として使われています。
※二十四節気の説明の中で引用している「暦便覧」とは、太玄斎の書いた暦の解説書で天明七年(1787)に出版されたものです。
2/4 ~ 2/18頃
暦便覧
春の気たつを以て也
立春から立夏の前日までが春。
まだ寒さの厳しい時期ではあるが日脚は徐々に伸び、九州や太平洋側の暖かい地方では梅が咲き始める頃である。
立春(りっしゅん)の時期にお出しするお品は菜の花の胡麻よごし。菜の花の緑と黄色の色合いも美しく、目と味で春の訪れを感じられます。
2/19 ~ 3/4頃
暦便覧
陽気地上に発し、雪氷
とけて雨水となれば也
空から降るものが雪から雨に替わる頃、深く積もった雪も融け始める。
春一番が吹き、九州南部ではうぐいすの鳴き声が聞こえ始める。
雨水(うすい)の時期にお出しするお品はおてっぱい。
てっぱいとは2種類の貝と分葱を酢味噌和えしたお料理。桃の節句にお出しするお料理となります。
3/5 ~ 3/19頃
暦便覧
陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出れば也
啓蟄は冬眠をしていた虫が穴から出てくる頃という意味。実際に虫が活動を始めるのはもう少し先。柳の若芽が芽吹き蕗のとうの花が咲く頃である。
啓蟄(けいちつ)の時期にお出しするお品は せりのおしたし。
春の七草の一つせり。せりは春先の若い茎だけが食べることができ、春の香りが感じられる一品。
3/20 ~ 4/3頃
暦便覧
日天の中を行て昼夜等分の時也
春分をはさんで前後7日間が彼岸。花冷えや寒の戻りがあるので暖かいと言っても油断は禁物。昼夜の長さがほぼ同じ頃であり、この後は昼の時間が長くなって行く。
春分(しゅんぶん)の時期にお出しするお品は 鯛の昆布じめ。
この時期に捕れる鯛を桜鯛といい、産卵期で身に脂が乗っており鯛がもっともおいしい時期となります。
4/4 ~ 4/19頃
暦便覧
万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれる也
清浄明潔の略で「清明」。晴れ渡った空には当に清浄明潔という語ふさわしい。地上に目を移せば、百花が咲き競う季節である。
清明(せいめい)の時期にお出しするお品は 一寸豆葡萄酒煮。
一寸豆とはソラマメのことで、大きさが1寸(約三センチ)あることから一寸豆と呼ばれております。空豆特有の香りが葡萄酒煮とよくあいます。
4/20 ~ 5/5頃
暦便覧
雨降りて百穀を生化すれば也
穀雨とは、春の雨が百穀を潤すことから名づけられたもの。気候もこの頃から安定し、日差しも徐々に強まってくる。昔はこの日を田植えの準備の目安にしていた。
穀雨(こくう)の時期にお出しするお品はたらの芽の胡麻味噌和え。
山菜の王様ともいわれるたらの芽はこの時期に芽吹きます。口いっぱいにひろがる独特の芳香が特徴的な人気の山菜。
5/5 ~ 5/20頃
暦便覧
夏の立つがゆへ也
立夏から立秋の前日までが夏。
野山に新緑に彩られ、夏の気配が感じられるようになる。
かえるが鳴き始め、竹の子が生えてくる頃。
立夏(りっか)の時期にお出しするお品は えんどうまめの葛ひき。
えんどうまめの鮮やかな緑色の彩りを葛のつややかさが包み込んで、清々しい初夏の訪れを感じさせます。
5/21 ~ 6/4頃
暦便覧
万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉繁る
小満とは、陽気がよくなり、草木などの生物が次第に生長して生い茂るという意味。西日本でははしり梅雨が現れる頃。
小満(しょうまん)の時期にお出しするお品は 肉じゃが。
この時期に出る新じゃがは、みずみずしさにあふれ、サクサクとした食感をお楽しみいただけます。
6/5 ~ 6/20頃
暦便覧
芒(のぎ)ある穀類、稼種する時也
芒種とは稲の穂先のように芒(とげのようなもの)のある穀物の種まきをする頃という意味であるが、現在の種まきは大分早まっている。
西日本では梅雨に入る頃。
芒種(ぼうしゅ)の時期にお出しするお品は ぜんまいの炒め煮。
ぜんまいは山野から、深山の沢沿いまで、湿り気のある土地にはえます。ぜんまい特有のくせになる歯応えをご賞味下さい。
6/21 ~ 7/6頃
暦便覧
陽熱至極しまた、日の長さのいたりなるを以て也
夏至は一年中で一番昼が長い時期であるが、日本の大部分は梅雨の時期であり、あまり実感されない。花しょうぶや紫陽花などの雨の似合う花が咲く季節である。
夏至(げし)の時期にお出しするお品は鱸のあらい。
目にも涼しく、淡泊な味わいは清々しさを感じさせるこの時期にぴったりの食材。鱸の身は血合いがほとんどない白身で、すすぎ洗いしたようなきれいな身に由来するとする説もあるほどです。
7/7 ~ 7/21頃
暦便覧
大暑来れる前なれば也
小暑は梅雨明けが近く、本格的な暑さが始まる頃。集中豪雨のシーズン。
蓮の花が咲き、蝉の合唱が始まる頃である。
小暑(しょうしょ)の時期にお出しするお品は 青唐辛子の炒め煮。
唐辛子といっても辛くなく、辛いものが苦手な方にも食べやすい一品。
7/22 ~ 8/6頃
暦便覧
暑気いたりつまりたるゆえんなれば也
大暑とは最も暑い頃という意味であるが実際はもう少し後か。夏の土用の時期。
学校は夏休みに入り、空には雲の峰が高々とそびえるようになる。
大暑(たいしょ)の時期にお出しするお品は 甘藷煮。
この時期のさつまいもは、ミネラルやビタミンを多くんでおり、一年で最もおいしい時期となります。自然な甘さとほくほくとした食感をお楽しみ下さい。
8/7 ~ 8/22頃
暦便覧
初めて秋の気立つがゆへなれば也
立秋から立冬の前日までが秋。
一年で一番暑い頃であるが、一番暑いと言うことはあとは涼しくなるばかり。暑中見舞いはこの前日まで、この日以降は残暑見舞い。
立秋(りっしゅう)の時期にお出しするお品は あらめだき。
あらめとは、海藻の一種で関西では古くから食べられております。食物繊維であるアルギン酸や、カリウム、カルシウム、鉄分などが豊富に含まれております。
8/23 ~ 9/6頃
暦便覧
陽気とどまりて、初めて退きやまんとすれば也
処暑は暑さが止むと言う意味。
萩の花が咲き、朝夕は心地よい涼風が吹く頃だが、台風のシーズンでもある。
処暑(しょしょ)の時期にお出しするお品は にしんなす。
脂肪の多い身欠きにしんの旨味が、油をよく吸収する旬の茄子にしみこみ、相性のよい炊き合わせとなります。
9/7 ~ 9/22頃
暦便覧
陰気ようやく重なりて露こごりて白色となれば也
野には薄の穂が顔を出し、秋の趣がひとしお感じられる「白露」。朝夕の心地よい涼風に、幾分の肌寒さを感じさせる冷風が混じり始める。
白露(はくろ)の時期にお出しするお品は いとこ煮。
小豆と野菜類を「追い追い」鍋に入れて煮込むことから、追い追いと甥甥をかけ、いとこ煮と呼ばれています。
9/23 ~ 10/7頃
暦便覧
陰陽の中分となれば也
秋分の時期は、暑さは減り代わりに冷気を感ずる日が増える。昼と夜の長さがほぼ同じになることで、この日は秋彼岸の中日でもある。
秋の七草が咲き揃う頃である。
秋分(しゅうぶん)の時期にお出しするお品は 鶏肝焼き。
この時期の鶏は冬に向けて脂がのりはじめ、旨味がよりいっそう美味しく感じられる時期となります。
10/8 ~ 10/23頃
暦便覧
陰寒の気に合って、露むすび凝らんとすれば也
冷たい露の結ぶ頃「寒露」。秋もいよいよ本番。菊の花が咲き始め、山の木々の葉は紅葉の準備に入る。
稲刈りもそろそろ終わる時期である。
寒露(かんろ)の時期にお出しするお品は 秋刀魚山椒煮。
この時期に日本近海に来る秋刀魚は、産卵を控えて脂ののりがよくなった秋刀魚を山椒煮でご賞味ください。
10/24 ~ 11/7頃
暦便覧
つゆが陰気に結ばれて、霜となりて降るゆへ也
霜降のこの時期は、北国や山間部では霜が降りて朝には草木が白く化粧をする頃。
野の花の数は減り始める、代わって山を紅葉が飾る頃である。
霜降(そうこう)の時期にお出しするお品は 里芋と烏賊の煮物。
この時期に旬を迎える里芋独特のねばりのある食感と、こりこりした烏賊の食感との相性の妙をお楽しみ下さい。
11/8 ~ 11/22頃
暦便覧
冬の気立ち初めていよいよ冷ゆれば也
立冬から立春の前日までが冬。日は短くなり時雨が降る季節。
北国や高山からは初雪の知らせも届き、関東では空っ風が吹く頃。
立冬(りっとう)の時期にお出しするお品は 柿膾。
美しい柿色に熟して、この時期の食べ頃を迎える柿の食感と甘みは日本を代表する秋の味覚といえます。
11/23 ~ 12/6頃
暦便覧
冷ゆるがこ故に雨も雪となりてくだるがゆへ也
小雪は陽射しは弱まり、冷え込みが厳しくなる季節。
木々の葉は落ち、平地にも初雪が舞い始める頃
小雪(しょうせつ)の時期にお出しするお品は 夫婦炊き。
焼いた豆腐と揚げた豆腐を一緒に煮込んだお料理です。
味や食感の相性がよいため夫婦炊きと呼ばれております。
12/7 ~ 12/21頃
暦便覧
雪いよいよ降り重ねる折からなれば
大雪となると朝夕には池や川に氷を見るようになる。
大地の霜柱を踏むのもこの頃から。山々は雪の衣を纏って冬の姿となる頃。
大雪(たいせつ)の時期にお出しするお品は おかぼだき。
京都ではカボチャのことをおかぼといいます。
夏に収穫し貯蔵することにより甘みが増し美味しくなるので、この時期が旬であると言えます。
12/22 ~ 1/5頃
暦便覧
日南の限りを行て日の短きの至りなれば也
一年中で最も夜の長い「冬至」。
この日より日が伸び始めることから、古くはこの日を年の始点と考えられた。
冬至南瓜や柚湯の慣習が残る日。
冬至(とうじ)の時期にお出しするお品は 焼き牛蒡。
京都では、お正月に無病息災とよい年でありますようにとの祈りを込めて、縁起物の鯛とお赤飯をいただきます。
1/6 ~ 1/20頃
暦便覧
冬至より一陽起るが故に陰気に逆らう故益々冷る也
この日は寒の入り、これから節分までの期間が「小寒」である。
寒さはこれからが本番。池や川の氷も厚みをます頃である。
小寒(しょうかん)の時期にお出しするお品は 小豆のおかいさん。
ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富な小豆は、その赤い色に邪気を追い祓う力があるとされ、この時期に食べると1年万病を防ぐと言われて、小正月に小豆粥を炊いて祝うのもそのためです。
1/21 ~ 2/3頃
暦便覧
冷ゆることの至りて甚だしきときなれば也
一年で一番寒さの厳しい「大寒」 。逆の見方をすれば、これからは暖かくなると言うことである。
春はもう目前である。
大寒(だいかん)の時期にお出しするお品は 蕗の薹の味噌和え。
蕗の薹がそっと雪の間から蕾を出す時期となります。早春の香りを感じていただる一品です。